間違えだらけの風邪治療???(風邪②)

風邪の治療について考えましょう。

前回風邪①で、風邪は、(抗生物質が有効なばい菌ではなく)抗生物質が無効なウイルスが原因であることを説明しました。

今回は、特効薬がないウイルス感染をどうやって治すのかを説明します。

 


風邪の治療薬の話の前に、風邪の症状がどうして出るのかを、発熱・咳を例に説明します。

発熱・・・体温が高い方がウイルスは元気よく増殖しません。また、体温が上がった(自律神経により上がる)方が、体内で(自力で)ウイルスをやっつける力が強くなります。つまり、発熱するのは風邪の原因である体内のウイルスをやっつけるためで、自分で意図しなくても自律神経により(交感神経優位)体温が上がり、その結果ウイルスを自力でやっつけて風邪を早く治そうとしてくれているのです。

・・・鼻や口から吸い込んだウイルスは、当然体の外に出した方がよいです。つまり、咳をすることで悪いものを外に出していのです。

 


皆さんが風邪をひいて病院受診した時、どんな薬を処方されましたか?

おそらく、熱を下げる薬咳を止める薬痰を切りやすくする薬等が処方されていると思います。総合感冒薬は、熱を下げたり咳を止めたり、色々な風邪症状を緩和する成分が少しずつ混ざっている薬です。

 


今までの内容をまとめると、

①風邪の特効薬はなし(ウイルスをやっつける薬はなし)

②熱はウイルスをやっつけて風邪を治すための体の反応

③咳は悪いものを外に追い出して風邪を治すための体の反応

④風邪で処方される薬は熱を下げる薬

⑤風邪で処方される薬は咳を止める薬

 

ここで何か気付くことはありませんか?

 

そうです。

熱を上げることでウイルスをやっつけられるのに、熱を下げる薬を処方される、なぜ?

咳をすることで悪いものが外に出てくれるのに咳止めを処方される、なぜ?

 

理由は、風邪を治す特効薬はなく、症状をやわらげる薬しかないからです。症状をやわらげる薬は、せっかく体が風邪を治そうとしてくれている反応(発熱・咳等)を邪魔しているのです。

 

 

 


それでは、なぜそのような薬が処方されるのか?

体力がない人の場合、解熱剤を使わないと発熱により脱水になって全身状態が悪化することがあります。また、体力があっても高熱はつらいため少しでも体力を消耗しないようにする目的で処方されたりします。

また、体力がない人の場合、激しい咳が原因で呼吸困難になることもあります。また、仕事中に咳が出たら困る等の理由で咳止めを処方される場合もあります。

そのような理由から処方されるのです。

ついでに、下痢をしたときに下痢止めをなるべく内服しない方がよい理由も同じになります。下痢により脱水になってしまう場合・仕事中に下痢をするのは困る場合などは、下痢止めを内服したほうがよいでしょう。


 

風邪を早く治したいからよく効く薬が欲しいといわれる方が多くいますが、早く治す薬はありませんもし仕事を休めないからという理由で薬が欲しい場合は、症状をやわらげる薬の中でも強い薬を選び、(治るのは遅くなるけれども)少しでも症状をやわらげながら活動するしかないのです。

薬で熱を下げると、(熱を下げない場合と比べて)体内でウイルスをやっつけるのに時間がかかるため治るのはかえって遅くなります。解熱剤で熱が下がったため、もう治ったのかと思ったけど、解熱剤をやめるとまた熱が出た、という経験をした方はいると思います。それは、体内のウイルスが自力で死滅させることがまだできていないため、当然のことなのです。自力でウイルスを死滅させて初めて治ったことになり、それに関してはウイルスの場合は薬ではなく自力でやるしかないのです。

咳を止めることに関しても、咳を止めることにより悪いものが長く体内にいることになるので、この場合も治るのはかえって遅くなります

 

以上から、風邪を早く治す一番の方法を強引な言い方で説明すると、

仕事などはせず安静にして、解熱剤は使わず熱をどんどん出してウイルスをやっつける。また咳止めは使わず、治るまでどんどん咳を出して悪いものを外に出す。そうすれば体力は消耗するけれども早く治ります。

ただし、これは体力がある人でないと危険な場合もあるので、症状がつらい場合は症状をやわらげる薬を内服しましょう。

 

くどいようですが、風邪を早く治したいからよく効く薬が欲しくても、そのような薬はありません

早く治したいなら、今までの説明から、風邪症状をなるべく止めないこと(体力がない場合は、治るのが長くなっても薬で症状を止めた方がよい)です。

また、安静にすることによりウイルスをやっつける力が増すので、安静にして、かつ症状を止めないことが一番早く治す方法といえます。

 

実際にはどうでしょう?

仕事を休めないから早く治る薬が欲しいという人はよくいます。

しかし、風邪を治す薬はないので、症状を強く止める薬を処方されることになります。

その場合、仕事をするため安静にできないので治るのは遅くなります。さらに、症状を強く止める薬を内服することになるので、風邪が治るのは、より遅くなるのです。

つまり、早く治したいから病院に来ているのに、より治るのが遅くなる選択をしてしまっているのです。

 


次は、重要な説明です。

以上の説明から、風邪をひいたら病院には行かず薬を飲まずに休んだ方がいいんだ、と自己判断で決めないでください

 

その理由は

①前述と同じ説明になります。薬を飲まず症状を強く出せばウイルスが早く死滅して治りますが、体力がかなり消耗します。つらい場合は、治る期間が少し長くなっても症状を止める薬も併用したほうがよい場合もあります。

②風邪だと思いこんでいたけど違う病気である場合もあります。

例えば、激しい咳の原因が風邪ではなく結核だったという例も多くはないけれどもあり、その場合は専門治療が必要になります。

また、風邪症状の原因がインフルエンザの場合は、より早くからインフルエンザの増殖を抑える薬を使った方がつらい高熱が早く治まることがよくあります。

この場合(抗インフルエンザ薬を使う場合)は風邪で解熱剤を内服するのと違い、ウイルスの増殖が抑えられた結果熱が下がるので、薬の副作用が出ない限り薬を使った方がよいです。

※インフルエンザの増殖を抑える薬で1日で熱が下がっても、治ったわけではなく、5日間は体内にウイルスがいます。1日で元気になっても5日間は人と接してはいけないのはそのためです。薬を使わなかったとしても5日間は体内にウイルスがいます。

また、前回も説明しましたが、溶連菌の場合はウイルスによる風邪と違い、抗生物質で溶連菌を殺菌できることが期待できるので、抗生物質を内服したほうがよいです。

 

 

今回の内容で言いたいことを一言でまとめると、

風邪で病院受診して投薬されても、(治す薬はないため)治す薬をもらえているわけではなく、症状をやわらげる薬をもらっているのだということです。

 


最後に、風邪の特効薬はありませんが、漢方治療によって、自力での自然治癒力を高めることは可能です。

自分自身は風邪をひくのが絶対に嫌なので、免疫力を高めるため、普段運動療法を徹底したり、栄養バランスを考えたり、数種類の漢方薬を内服したりしています。その結果、風邪らしい風邪は長いことひいていません。当院では、風邪をひきにくくするための指導にも力を入れています。