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■風邪と漢方薬 ■すぐ治る風邪と長引く風邪の違いは?

以前のコラムhttps://www.sono-cl.com/column/59/

で、風邪を早く治すための有効な薬はなく(風邪を治す薬自体がなく)、自分の免疫力で治すしかないことを説明しました。

 

 

 風邪を引いてしまってつらい症状が出た

→早く治す方法を知りたい

→ネットで早く治す方法を検索して探す

 

という人は多いと思います。

 

 

しかし、引いてしまった以上

 

残念ながら早く治す有効な手段はなく治るまで症状を我慢するしかない

 

ので、風邪を引かないようにするのが一番だと当院では考えています。

 

また、

つらい風邪症状(発熱・咳等)をどんどん出すこと=風邪の治療

なので、薬で症状を止めない方が早く治ることも以前のコラムで説明しました。

 

 


 

■風邪と漢方薬

 

漢方薬の場合は、発汗させたり自分の免疫力を高めたりして自然治癒させるので、内服する意味はあると思います。

ただし、漢方治療に対しては、経験上風邪を引いた後よりも引きそうなときの方が効果が高く、そういうところは当院で得意としています。風邪は時間が経てば治るので、風邪の中期・後期の場合は、漢方薬を使った場合と使わなかった場合との差が分かりにくいです。

引きそうだった風邪が引かないで済めば、効果がよく分かります

 

風邪の初期(実際には引きそうかなというとき)に漢方薬の飲み方・量・タイミング等を工夫すると、引きそうな風邪が引かないですんだり、風邪症状が軽くすむことはよくあります(自分自身もよくやっています)。

また、冷え性の人が(冷え性の)漢方治療をしていると、治療していない場合より風邪を引きにくいことが多いようです。

 

 


 

■すぐ治る風邪と長引く風邪の違い

 

考えられる原因をいくつか説明します。

 

 

⑴ウイルスの種類による

 

風邪の原因はウイルスで、非常に種類が多いです。

感染力の弱いウイルスと強いウイルスのどちらに感染したか、また、過去に感染したことがあるウイルスか、ないウイルスかによって治り方に差が出ます。

 

過去に感染したことがあるウイルスの場合>

この場合はある程度免疫を持っているために早く治ると考えられます。

 

過去に感染したことのないウイルスの場合>

この場合は一から闘わなければならない(免疫を持っていない)ので、治るのに時間がかかると考えられます。

 

同じ風邪症状でも、どんなウイルスが体内に入ったのかはわからないことがほとんどです。

 

 

⑵安静にできているかできていないか

 

以前のコラムで説明した通り、特に風邪の初期に

 安静にできないと

→(ウイルスと十分闘えないため)ウイルスがなかなか死滅せず

長い間体内にいる

ことになるので長引く原因になります。長く体内にいると気道の炎症が強くなり、それが治るのに時間を要すため、1か月位咳が続くこともあります。この場合の咳の特徴は薬(咳止め)が効きにくいことです。

 

 

⑶薬が原因

 

以前のコラムで説明した通り、特に風邪の初期に

 風邪症状を止めすぎると

長い間ウイルスが体内にいる

ことになるので長引く原因になります。安静にできない場合と同じく、ウイルスが長く体内にいると気道の炎症が強くなり、それが治るのに時間を要すため、1か月位咳が続くこともあります。この場合の咳の特徴も薬(咳止め)が効きにくいことです。

 

 

⑷その他

 

言われなくても分かることだと思いますが、

栄養がとれていない部屋が寒い部屋の湿度が低い

等が長引く風邪の原因として考えられます。

 

 

 


 

【問題】

 

以上の説明から次のような場合、どんな原因が考えられるでしょうか?

 

前回の風邪は仕事をしながらでもすぐに治ったのに、

今回の風邪は仕事をしないで安静にしてもすぐに治らなかった。

(※❶❷は同一人物で、2回とも同症状の風邪です)

 

 

【答え】

おそらく、1回目の風邪は以前かかったことがあるウイルスが原因で、免疫を持っていたと考えられます。2回目の風邪は、初めて感染したウイルスが原因で、一から闘うのですぐに治らなかったと考えられます。

つまり、同症状の風邪でもウイルスの種類によって治り方が違うということです。

 

また、ウイルスの種類は多いですが、感染力が弱いものから強いものまで色々存在するので、1回目は感染力の弱いウイルスで、2回目は感染力の強いウイルスだった、ということも考えられます。

 

 


 

安静にしているのに

 

「今回の風邪はしつこくてつらい」

 

という場合は今までに感染したことのないウイルスが風邪の原因であると考えられます。

 

そして、症状がつらいということは、それだけウイルスと激しく闘っており、それが風邪の治療なのです。

 

つまり、

 

 症状が出ている

ウイルスと闘っている

=(ウイルスを死滅させるための)風邪治療を体がしてくれている

 

ということになります。

何度も言いますが、薬は症状をやわらげるもので、使いすぎるとウイルスとの闘いを邪魔するので治るのが遅くなります。

ウイルスを死滅させる薬が存在しない以上、風邪を薬では治すことは不可能で、

 

風邪症状を出すことが風邪の治療だということを多くの人に理解してもらいたいです。