熱中症予防に積極的な塩分補給は必要か?
■熱中症予防に、ほとんどの人は積極的な塩分補給は不要
汗をかくと水だけでなく塩も体の外に出てしまうのは紛れもない事実です。
だとすると、
「熱中症予防のため水分だけでなく塩分も積極的に補給しましょう」
とよく世間で言われていることは正しいでしょうか?
正しい人も正しくない人もいます。
ほとんどの人は
「熱中症予防のために、積極的な水分補給は必要だけど積極的な塩分補給は不要」
です。
その理由はとても簡単です。
■熱中症予防のための積極的な塩分補給は不要な人が多い理由
理由は、
「日本人の食事での平均塩分摂取量が必要量を大きく上回っているから」
です。
どういうことかというと、あえて塩分を意識して摂取しなくても、一般的な食事をしている時点ですでに塩分過多になっているため、さらに意識して塩分を摂取したら逆に不健康になるということです。
よって、大汗をかく例外の人(どのような人かは後述)以外はあえて塩分を追加補給する必要はないのです。
後述するような、よほどの汗をかく人の方が少数派なので、多くの人は塩分を意識して補給する必要はないということです。
■日本人はどれくらい塩分を摂取している?
一般的な味の濃さの食事をすると、
「摂取塩分量は必要塩分量の1.5~2倍くらいになる」
と言われており、辛党の人はさらに塩分摂取量が多くなるのです。
「自分はそんなに塩をふりかけないし・・・」
という人もいますが、そういう人に限って漬物やみそ汁を好んでいたり、塩分の多い加工食品(ウインナー、ハムなど)や魚を好んでいたり、しょうゆやケチャップ、ソースなどを好んでいたりします。知らず知らずのうちに塩分を多く摂取していることに気づいていない人も多いようです。
実際、
ほとんど味のしない食事でも人体に塩分が足りなくなることはないと言われています。
でも、
味がしないと美味しくないから皆塩を多く摂取しているだけ
なのです。
ただし、
中には健康志向が強く普段から塩分制限を徹底していて
「一般の人よりも薄味の食事しかしない」
という人もいるでしょう。でも、おそらくそのような人は少数派だと思います。そのような人は(あまり運動しない場合でも)夏場に限っては塩分を意識して補給した方が良いでしょう。
他にも、熱中症予防のために積極的に塩分補給した方が良い人もいます。
どのような人でしょう?
■熱中症予防のために積極的に塩分補給した方が良い人はどんな人?
具体例をあげると、次のような人です。
●夏でもよく運動する人
(例えば)ジョギングが趣味で、炎天下でも欠かさず外を走る人
(例えば)高校球児など、夏でも炎天下で汗を大量にかく人
●炎天下で現場仕事をする肉体労働者
●猛暑でも仕事などで屋外にいる時間がとても長い人
など
要するに大汗をかく人です。
上記のような人は、熱中症予防のために水分だけでなく塩分も積極的に補給した方が良いでしょう。上記に当てはまらず、
なおかつ特に塩分制限していない人は・・・
前述したように塩分は(食事で)すでに必要量以上に摂取しているので、水分摂取だけを意識すれば良いのです。
■スポーツドリンクの注意点
「熱中症予防には水分以外に電解質も含んだスポーツドリンクが良い」
と言われています。
電解質も一緒に補給できるので確かに良いといえますが・・・
次の❶❷を知らない人が意外にいるので、知っておきましょう。
❶糖尿病の人はスポーツドリンクを避けた方が良い。
❷(糖尿病の人でなくても)大量に摂取しない方が良い。
❶❷をそれぞれ説明します。
❶糖尿病の人は避けた方が良い
スポーツドリンクには大量の糖が含まれており、液体なのでとても(糖の)吸収が速く勢いよく血糖値が上がります。そのため、糖尿病の人がスポーツドリンクを飲むと持病を確実に悪化させるので絶対に避けた方が良いのです。ただし、血糖値を下げる治療の副作用で低血糖になっている場合は、血糖値を勢いよく上げる効果が高いスポーツドリンクを飲むのは良い(低血糖の治療には良い)です。
❷大量に摂取しない方が良い
糖尿病でなくても、また糖尿病に全く無縁の人でも、
大量摂取により、
「短期間で糖尿病になってしまう(=急性糖尿病)」
リスクが高くなります。
これはペットボトル症候群といって、スポーツドリンクを大量に摂取することで、(いままで糖尿病と全く無縁の人でも)飲料の糖が原因で糖尿病を短期間で発症させてしまうことをいいます。
糖尿病に無縁だった人がペットボトル症候群になり、血糖値が1000mg/dl以上(正常値は70~140mg/dl)になって意識を失って救急車で運ばれた患者さんを、
自身は(かなり昔に)診たことがあります。その患者さんは入院加療して元気になって退院しましたが、以後糖尿病という一生の持病と付き合うことになってしまったのです。
不安をあおるわけではありませんが、
「糖を液体で大量摂取するのは大変危険」
だということがマスコミであまり言われないので、このことを知らなかった人は絶対に知っておいてください。
※スポーツドリンクだけでなく、ジュース類の大量摂取もペットボトル症候群の原因になります。
■熱中症予防の飲み物
前述したように、
多くの人は食事で塩分を十分すぎるくらい摂取しています。
また
多くの人は炎天下での運動は避けています。
つまり、
特に塩分制限をしていない人、夏に外で運動しない人、
この2つが両方当てはまるという人は、
塩分追加補給を意識せず、水分補給だけを意識すれば十分です。
飲み物としてコーヒー、紅茶、緑茶などはカフェインによる利尿作用があるので、メイン飲料にはしない方が良いでしょう。メイン飲料はノンカフェインである水、麦茶、爽健美茶、十六茶などが良いと思います。