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五苓散はどんな漢方?梅雨時期に有効?

 

 

 

 

 

 

 

■病名処方されやすい五苓散(病名処方は望ましくないこと)

 

 

 

五苓散(ごれいさん)はとても有名な漢方薬で、漢方内科以外でも頻繫に処方される漢方薬の一つです。

 

残念ながらほとんどが病名処方のようです。

 

 

五苓散の場合、例えば

 

 

「気圧の変化(雨など)で頭痛がします」

「むくみます」

「めまいがします」

「お酒に酔いやすいです」「二日酔いに効く漢方が欲しい」

 

などの症状を伝えて医師が

 

「それには五苓散が効きます」「よく効く漢方薬(=五苓散)があります」

 

というように、

 

症状だけを聞いて五苓散を処方したら・・・

 

典型的な病名処方です。

 

漢方内科では、このように症状からすぐに処方を決めることはしないです。

 

 

 

 


 

 

 

 

■五苓散は病名処方されても有効なことが多いけど・・・

 

 

 

上記の症状ならば、病名処方された五苓散でも有効なことは多いです。

 

そのため漢方内科以外で病名処方されても問題ないかもしれません。

 

でも、漢方診療では症状以外に全身状態も細かく診るので、同じ五苓散の処方でも意味合いが全く違うのです。

 

五苓散が無効の場合、病名処方しかできない場合はどうすることもできません。

 

つまり、病名や症状から飛びつく処方方法では有効な漢方薬を導きだせないことがあるので望ましくないのです。

 

 

 

今回は、五苓散がどのような漢方薬でどのような場合に特に有効なのかを説明します。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

■五苓散は利尿というより利水が特徴の漢方薬で身体の水分を調整する

 

 

 

利尿と利水は似ているようでイコールではなく、西洋薬の場合は利尿剤、漢方薬の場合は利水剤です。

 

五苓散など漢方薬の利水剤は体内の水分バランスを整えますが、

 

体内の水が過剰なら利尿させ、逆に少なければ利尿させず保持させるのが特徴です。

 

それに対し西洋薬の場合は利水剤ではなく利尿剤で、利尿にしか働かないので体の水分が不足している場合は脱水にならないよう気をつける必要があります。

 

 

漢方の場合は利水剤なので利尿と抗利尿の両方の作用があり体の状態に合わせて作用してくれる優れものなのです。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

■五苓散は体内に滞った水を巡らせるのが特徴の漢方薬 有効な人は・・・

 

 

 

五苓散は体内に滞った水を巡らせるのが特徴の漢方薬です。

そのため体内に水をため込みやすい人に有効です。

 

※体内に水が滞っている状態を水滞(すいたい)または水毒(すいどく)といいます。

 

では、どんな人が水をため込みやすいでしょうか?

 

 

 

 


 

 

 

 

■水をため込みやすい人はどんな人か?

 

 

 

五苓散の効能を見ると、

 

「口渇・尿量減少」

 

の人に有効と記載されています。

 

理由は簡単で、この2つは水をため込みやすい人の特徴だからです。

 

水分を多く飲む人と飲まない人では、どちらの方が水をため込みやすいですか?

 

多く飲む人ですね。のどが渇くと多く飲むので、結果的に水をため込みやすくなるのです。

 

また、尿量が多い人と少ない人では、どちらの方が水をため込みやすいですか?

 

少ない人ですね。尿量が少ないと体内に水分が残りやすいので結果的に水をため込みやすくなるのです。

 

つまり、

 

口喝・尿量減少の両方が揃うと水をため込みやすいから、そのような人は(水の巡りをよくする)五苓散が効くことが多いのです。

 

 

 

 


 

 

 

 

■梅雨など気圧変化で起こる色々な不調に五苓散が有効になるのは何故か

 

 

 

 

人は外界の自然と調和をすることで生命を維持しています。

 

もし自然界の気圧が変動し空気中の水分量も変化したら・・・

 

外界の自然と調和している人の体内の水分も変化しやすくなるのです。

 

この変化が大きい人(気圧に左右されやすい人)は梅雨時期などに体内に水をためやすくなり、不調を感じるのです。

 

気象病という言葉がよく使われますが、まさにこのことです。

 

 

 

 


 

 

 

 

■気圧変化による頭痛に五苓散が効く理由

 

 

 

体内の色々なところに水が滞りますが、

 

気圧変化が生じることで水が滞りやすい体内の場所が、頭なのです。

 

つまり

「気圧変化で頭痛」という症状の患者さんが非常に多いのは、外界の気圧変化に伴い体内の頭に水が滞ることが多いからです。

 

そのため、そのような人が

 

五苓散を内服する

→気圧変化により頭に滞った水が巡る(利水する)

→頭痛改善

 

ということが起こるのです。

 

 

※頭痛以外に頭重感めまいを訴える患者さんも多いです。

 

 

 

 


 

 

 

 

■頭以外にも体の色々なところに水が滞る

 

 

 

 

 

気圧変化で頭に水が滞ることが多いですが体内の他の場所にも滞ります。

 

例えば、全身に水が滞るとむくんだり倦怠感が強くなったりします。

 

また、胃腸に水が滞ると吐いたり下痢したりします。腹診(お腹の診察)でお腹を軽くたたいた時にポチャポチャ音がしたら、胃腸に水が滞っている可能性があります。

 

鼻も水が滞りやすい場所で、その場合透明な鼻水が出たりします。小青竜湯という有名な漢方薬は鼻の水の滞りを改善させる漢方薬です。

 

さらに、関節も水が滞りやすい場所で、滞ると関節痛やこわばりなどの症状が出ます。その場合は関節の水を利水させる漢方薬を処方します。

 

 

 

 


 

 

 

 

■気圧で頭痛=五苓散としてはいけない

 

 

 

水が滞っている場合の頭部症状の場合、五苓散の他に苓桂朮甘湯、真武湯、半夏白朮天麻湯などの漢方薬が有効なことも多々あります。

これらは全身状態を詳しく診て使い分けする必要があります。

 

これらの漢方薬を使い分けできる医師に漢方薬を処方してもらうことが望ましいです。

 

多くの場合、

 

気圧で頭痛=五苓散

 

と病名処方され、実際に有効なことが多いため患者さんは納得しているかもしれませんが、

 

病名処方は漢方の伝統に則った処方方法ではありません。

 

これに関しては、また別のコラムで説明します。