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「疲れやすい」に対する漢方治療

 

「疲れやすい」と自覚している人はとても多いです。

明らかな病気が隠れていなくて疲れやすい場合は、

漢方治療で改善する可能性があります

 

 


 

 

■「疲れやすい」に対する漢方治療は、原因により変わる

 

 

【原因⑴】燃料不足燃料の巡回不良で疲れる

 

人の燃料(エネルギー)と言えば、食事摂取による糖、脂質、タンパク質などが代表です。

漢方の場合、目に見えない燃料(エネルギー)がどうなっているのかを診ます。

 

目に見えない燃料(エネルギー)の代表は、

「気分」「気持ち」「気合い」「気力」・・・

など、「気」が付くもので、これらはすべて目で見ることができません。

この目に見えない「気」という燃料(エネルギー)が正常でない場合は、疲れやすくなります。

正常であるかどうかを調べる場合、

問診で大体検討がつくこともあれば、舌を診て分かることもあれば、おなかを診て分かることもあります。

 

正常でない場合で多いのは、

 

❶目に見えない「気」という燃料(エネルギー)が足りていない(漢方では気虚といいます)

 

❷目に見えない気」という燃料(エネルギー)が足りているけれども体中を巡っていない(漢方では気うつ気滞、気逆といいます)

 

などです。

 

つまり正常ならば、「気」という燃料(エネルギー)が十分あって、かつそれが体中を巡ってくれるため疲れやすくなることはないけれども、

 

❶❷のように不足したり巡らなかったりしたら疲れやすくなってしまうのです。

 

もし「気」という燃料(エネルギー)が

 

❶足りていなければ「気」補う漢方薬を、

 

❷巡っていない場合は「気」巡らせる漢方薬

 

を処方します。

 

 

 

【原因⑵】血液の不足滞りなどが原因で疲れる

 

漢方では、

 

血液が不足していることを血虚(けっきょ)

 

血液が滞っていることを瘀血(おけつ)

 

と言います。

 

どちらも、皮膚の色を診たり舌を診たりおなかを診たりして診断します。

 

血液が不足していれば(血虚ならば)補う漢方薬を、

血液が滞っていれば(瘀血ならば)滞りを改善させる漢方薬を

処方します。

 

 

【原因⑶】水分(水)の滞りが原因で疲れる

 

血液以外の体液のことを漢方では「水(すい)」と呼びます。

水分の滞りは水毒と呼び、これが原因で疲れることもあります。

一例として、天気や気圧の関係で著しく症状が悪化する場合、水毒の可能性があります。

水毒が疲れやすい原因なら、利水剤と呼ばれる漢方薬を処方します。

 

 


 

 

■「疲れやすい」原因には、色々なことが複雑に絡んでいることも多い

 

上記の例のように原因が簡単で、漢方薬を内服してすぐに改善する人もいます。

ただし、「疲れやすい」原因として、実際は色々なことが複雑に絡み合っていることも多いため、漢方薬を内服してもすぐに改善しないこともあります。

複雑な場合ほど重要になってくるのが、医師と患者さんの信頼関係です。

 

医師と患者さんの信頼関係が築ければ・・・

 


 

 

■医師と患者さんの信頼関係が重要な理由

 

「疲れやすい」原因が複雑な場合、

それを医師が知るには

患者さんの色々な事情やストレスなどについても話し合える必要があり、そうでないと病気の本質が見えません。

つまり、病気の本質を見るには医師と患者さんが色々なことを話し合える必要があり、そうなれば医師と患者さんが信頼関係を築けているといえるのです。

そのようになれば複雑な原因による「疲れやすい」を治すことが可能になるのです

ただし、初診時は医師と患者さんは初対面になります。そのため、はじめからこのような信頼関係を築くのは難しいです。症状がすぐに改善しない場合は、受診のたびに少しずつ信頼関係を気づいていくことも重要で、それが病気を治す近道にもなるのです。

 


 

 

■「疲れやすい」に対して漢方が適応にならない例

 

 

明らかな病気があり、それが疲れる原因の場合は、まずは西洋治療の適応になります。

例えば、

甲状腺ホルモンが多く出る「バセドウ病」、

逆に甲状腺ホルモンが少ない「橋本病」などは、

西洋薬を使ってホルモン値をコントロールする必要があり、その治療で通常は症状が改善します。ホルモン値がコントロールできても(症状改善が)不十分なら、漢方を併用ることもあります。