間違いだらけの治療???
「風邪は薬で治るもの」と思っている人は非常に多いようです。
熱を下げる薬や咳を止める薬を内服しても体内のウイルスが死滅するわけではありません。
それどころか、熱を下げるとウイルスが体内で増殖しやすくなるため、治るのが遅くなることもあります。
風邪の急性期で、体とウイルスが強く闘っているときほど症状をやわらげる薬は効きにくく、治らないから違う薬に変えたいと思うのは大きな間違えです。風邪①・風邪②・風邪③の内容は皆さんに是非理解していただきたい内容です。
今回は、風邪に限った内容ではありませんが、よくある間違いについて説明します。
よくある間違いの内容は、
「食欲がないから、栄養補給のために点滴してほしい」です。
何が間違っているのか?と思う方は多いかもしれません。
一言で説明すると、普通の点滴で、食事で補給するようなカロリーを入れることが不可能だからです。手の血管に点滴の針を刺して、カロリーの高いものを注入するとどうなると思いますか?
痛くて痛くて痛くて痛くて痛くてたまらなくなり、血管(静脈)がボロボロに傷んでしまうのです。
皆さんが外来でやってもらう点滴は、高カロリーの点滴ではないのです。高カロリーだととてもじゃないけど血管(静脈)がもちません。
500mlの点滴をしても、少しのカロリーしか体に入らないのです。
以上の内容を短くまとめると、高カロリーの点滴は手の血管(静脈)を痛めるため不可で、点滴をしてもほんの少しのカロリーしか補給できないため、
「食欲がないから、栄養補給のために点滴してほしい」は間違っているのです。
それではどういう場合に点滴が有効か?
手から点滴をしても少しのカロリーしか入らないため栄養補給はできませんが、水分は多く入れられます。
つまり、次のような場合は間違っていません。
「水分がとれないから、水分補給のために点滴してほしい」
「水分摂取すると、嘔吐や下痢がひどくなり脱水が心配なので点滴してほしい」
要するに、点滴は水分や電解質を体に入れるもので、たくさんのカロリーを入れるものではないということです。
【補足】
①中心静脈栄養といって、麻酔をして太い血管に針を刺して行う点滴があります。この血管の場合は高カロリーに耐えられるため、高カロリー輸液が可能です。ただし、この点滴は入院患者様にやる点滴で、外来でやることはありません。
②水分がとれない場合は点滴の適応ですが、何日も水分がとれない場合は原則入院治療が望ましいです。