肩こり首こりストレートネック四十肩五十肩の漢方治療
■はじめに
首こり、肩こり、ストレートネック、四十肩、五十肩・・・
漢方治療で症状が軽減したとしても、原因がある場合はそれを改善しないと根本から治ったことにはなりません。
例えばスマホの見過ぎのような原因がある場合、それを改善しないで漢方治療しても根本から治ることはありません。
もし整形外科的な治療が必要な場合は整形外科や整体で治療をし、その上で漢方治療を併用した方が良いでしょう。
■自身の唯一の不調
健康に自信がある自身!
ですが、唯一の不調は首こりです(肩こりは自覚していません)。
今回は、自身の漢方体験を交えながら説明します。
自分で自分を漢方診断した経緯などを説明します。
スマホやパソコンを長時間見ることはなく、姿勢も良いと言われます。原因として考えられるのは寝相?見えないストレス? 思い当たる明らかな原因はありません。
■代表的な漢方薬
代表的な漢方薬の一例は
❶葛根湯(かっこんとう)
❷桂枝加葛根湯(けいしかかっこんとう)
❸葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう)
❹独活葛根湯(どっかつかっこんとう)
❺呉茱萸湯(ごしゅゆとう)
❻各種柴胡剤(さいこざい)
❼桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
❽二朮湯(にじゅつとう)
❾治打撲一方(ぢだぼくいっぽう)
❿大陥胸丸(だいかんきょうがん)
⓫括楼桂枝湯(かろうけいしとう)
⓬桂枝去桂加茯苓白朮湯(けいしきょけいかぶくりょうびゃくじゅつとう)
このうちエキス剤になく、かつ適応になる人が多くない❿~⓬の説明は省略します。
自身は上記のうち2つを内服することで症状が軽減しています。
実際に患者さんを診察するときは、
このようにいくつかの漢方薬を頭に思い浮かべて、詳しく診察しながらどれが一番良いかを決める、という手順をとることが多いです
■首こりの漢方診断① 葛根湯類
風邪初期によく使われる有名な漢方薬の葛根湯は、肩こり頭痛に使われることもあります。
❶~❹の葛根湯類のうち、冷えが強い場合は❸の葛根加朮附湯になりますが、自身は冷えがないので候補から外れます。
また、漢方診断で重要な虚実(きょじつ)に
虚証、実証、虚実間証(虚証と実証の中間)がありますが、自分で診断すると(やや実証寄りの)虚実間証です。
虚実の考え方は、
体力があれば実証、なければ虚証、2つの中間が虚実間証と言っても間違いとは言いませんが・・・
病気と闘う力が強ければ実証、弱ければ虚証、2つの中間が虚実間証という考え方もします。
虚実の診断は外見、声なども診断の手掛かりにしますが、
手首の脈を触れて力強いか弱いか、お腹を押して跳ね返す力が強いか弱いかでも診断します。
自身はやや実証寄りの虚実間証で、漢方薬の添付文章でどのように表現されるかというと
「体力中等度かそれ以上の人」「比較的体力のある人」のような表現をしていることが多いです。
そうなると桂枝加葛根湯は候補から外れ、葛根湯類の中では葛根湯が一番の候補になります。
残った一つの独活葛根湯は虚実で言うと葛根湯より虚証寄りになりますが、効能的には葛根湯をより首こり肩こり向きにしてあるのでこれも候補としました。
葛根湯類では葛根湯と独活葛根湯を候補として他は候補から除外しました。
■首こりの治療② 呉茱萸湯
呉茱萸湯(ごしゅゆとう)は片頭痛に良く使われ、肩こり、嘔吐、しゃっくりなどにも使われます。
この漢方薬が合う人は必ず冷えがあります。また虚実で言うと虚証になります。
そのため、冷えがなく虚実間証の自身の場合即候補から外れます。
呉茱萸湯が合う人の典型例はアイスクリーム頭痛を起こしやすい人です。要するに胃に冷たいものを入れると、その冷気が身体上部に上っていき頭痛・嘔吐・肩こりなどの症状を起こすような人です。
そのため呉茱萸湯が合う人は冷たいものを飲みたくない人が多いです。
とても苦い漢方薬ですが体に合う患者さんは苦みが気にならないようです。
■首こりの治療③ 各種柴胡剤(さいこざい)
柴胡剤とは、成分に柴胡(さいこ)が入っている漢方薬、厳密には柴胡(さいこ)と黄芩(おうごん)が入っている漢方薬です。
代表的な漢方薬には小柴胡湯(しょうさいことう)、大柴胡湯(だいさいことう)、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)があります。
柴胡剤が合う人は、腹診で一番下の肋骨の下側(左右どちらか又は両側)を押すと不快に感じることが多いです。
これは専門用語でいうと胸脇苦満(きょうきょうくまん)といいます。
柴胡剤の場合、どちらかというと身体中央の首より横の肩がこる場合に適応になりやすいです。
自身の場合、柴胡剤の証ではないと判断し候補から外しました。
■首こりの治療④ 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
桂枝茯苓丸は女性に適応になることが多い漢方薬の一つで、この漢方薬が適応になるのは
「瘀血(おけつ)」がある人です。
瘀血とは、血液の巡りの滞りがある状態です。
漢方診察では、舌の色が通常より暗い赤色であったり舌の裏側の2本の血管がくっきり見えたり、あざができやすかったり、色々あります。
また、腹診では下腹部(おへそより下)を押したときに痛みや抵抗を感じることが多いです。
しこりを触れたら、瘀血の存在は確実と言って良いと思います。
桂枝茯苓丸は、虚実で言うと実証の人が適応になることが多いですが明らかな瘀血があれば、虚証でも全く問題なく使えます。
自身の場合は虚実での矛盾はありません(実証寄りの虚実間証)が、舌の色やお腹を押したときの状態から考えると瘀血はありません。
そのため候補から外したくなりましたが、首こりは首部分の血液の滞り(瘀血)と考えることもできるので一応候補に入れました。
■首こりの治療⑤ 二朮湯(にじゅつとう)
この漢方薬は四十肩五十肩に良く使われますが、どんな人にでも効くわけではありません。
二朮湯は温める漢方薬で、寒冷により増悪する人に適応になることが多いです。
また、水毒(すいどく)又は水滞(すいたい)といって水が滞る状態を改善させる成分(生薬)が多く入っており、水毒の人に適応になります。
自身は冷えがなく寒冷で増悪しないし水毒もないので候補から外しました。
経験的に二朮湯の有効例は少ないと感じています。
■首こりの治療⑥ 治打撲一方(ぢだぼくいっぽう)
名前の通り、打撲や捻挫等で使うことが多い漢方薬です。
打撲で内出血して痛い場合など、打撲の直後でも時間が経ってからでも使うことができる漢方薬です。
前述した桂枝茯苓丸と同様に瘀血に良いですが、桂枝茯苓丸の方が瘀血を改善させる作用が強いです。
例えばむち打ちや首の過負荷(スマホの見過ぎ等)も打撲の一種と考え適応になることがあります。
治打撲一方は前述した候補の
葛根湯、独活葛根湯、桂枝茯苓丸が無効の場合に、次の候補にしようと考えました。
以上より
葛根湯、独活葛根湯、桂枝茯苓丸の3種を候補とし、その効果は・・・
■葛根湯と独活葛根湯はどちらも一定の効果あり
独活葛根湯は、葛根湯をより肩こり首こり向きにした漢方薬です。
虚実で言うと葛根湯の方が実証寄りで、実証寄りの虚実間証の自分には合いそうです。
実際にどちらも内服しましたが、それなりに効果は感じました。
独活葛根湯は葛根湯より肩こり首こり向きにした漢方薬なので効果を期待しましたが、自分には両者に大きな差を感じませんでした。
独活葛根湯は虚実が少し違うために言われているほどの効果が出なかったのかもしれません。
ちなみに独活葛根湯は、地黄(じおう)という胃もたれしやすい成分が含まれています。普段胃腸の不調は全くありませんが、内服する際は副作用防止を考えて西洋薬の胃薬も併用しました。
■まさか桂枝茯苓丸が・・・
桂枝茯苓丸
自分には虚実は合うけど瘀血はないと考えていたので、瘀血に有効な桂枝茯苓丸の効果は期待できないと考えていました。
ところが、葛根湯又は独活葛根湯に桂枝茯苓丸を併用した方が楽でした。
結果的に首部分に瘀血があったと考えられます。
実際に同じような患者さんを診察したとしても、
舌診や腹診から瘀血が明らかでないので桂枝茯苓丸を第1候補にすることはないと思います。
■首こりに対する他の工夫
前回コラムの、ランニングマシンを使った有酸素運動をしていると首こりが楽になります。
肘ではなく肩を振ることを意識しているため肩の筋肉がほぐれ、連結している首の筋肉もほぐれていると考えられます。
また運動中は動いていることで首への血行も良くなるため楽になったと考えられます。
他で意外に良かったのが・・・
■ぶら下がり健康器
若い人は馴染みないものかもしれませんが、ぶら下がり健康器が良かったです。
ぶら下がり健康器は昭和時代に流行った健康器具で、ぶら下がるだけで健康になれると言われていました。
長く続けられれば健康に良いことは間違いないと思いますが、
飽きてしまう人が多いのか、続かなくて用途をハンガーラックに変えてしまう人が多かったようです。
ぶら下がり健康器は現在でも販売されていることが分かったので、良いかもしれないと思い購入しました。
高価なものもありますが、全体重をかけてぶら下がったり懸垂するようなことは想定していなかったので手ごろな価格のものにしました。
やり方としては足を地面について背中や肩を伸ばすことを意識するだけです。
他にも日常生活で良さそうなものがあればチャレンジしようと思っています。


